ナレーション 【十一月】

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ナレーション 【十一月】

 十一月、パリはすっかり冬を迎えています。銀杏並木を見ながら、冬吾は会わなくなったリディーのことを考えてしまいます。クロードが戻ってきたのなら、それで良かったと思おうとしながらも、まだ彼女への気持ちを燻らせています。  そんななか、ひとり足を運んだ芸術図書館で、リディーに会ってしまいます。クロードとは別れたと言う彼女の言葉を信じて部屋に行く冬吾でしたが、壁面の写真が跡形もなく消えていることに漠然とした不安を覚えます。  これまでと違い、リディーは誘うような態度を取ってきますが、冬吾が気持ちを伝えても、欲しい言葉はもらえません。胸の軋みを感じながらも、冬吾は流されるように関係を持ってしまいます。うたた寝から目を醒ました冬吾は、窓際で煙草を吸うリディーに、眠ってしまったことを謝りますが。
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