十二月

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 演奏が終わると、セッションメンバーへ軽く頭を下げ、早々と舞台を下りた。  カフェアズールは、セッションに参加するミュージシャンと観客でごった返している。人を掻き分け店内を探しても、リディーの姿は見つからなかった。  扉を開けて外へ飛び出した僕は、あまりの寒さに身震いした。街灯のあかりに、ちらちらと浮かび上がっているのは雪だった。寒いはずだ。 「リディー!」  大声で彼女を呼ぶ。まだきっと近くにいるはずだ。  通りを歩く人々が何ごとかと僕のほうを振り返った。走って探しても彼女の姿はない。もう去ってしまったんだろうか。  僕の上下する胸に合わせ、白い息が形を現し、また静かに消えていく。  雪の落ちてくる空を見上げて、瞼を固く閉じた。そうでもしていないと、叫びだしてしまいそうだった。  なにをなのか、誰に対してなのかもわからない。でも、込み上げてくる怒りとも哀しみともつかない感情に、僕の胸は張り裂けそうだった。
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