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ナレーション【五月】
主人公の早川冬吾は、コレージュ(フランスでいう中学校)に通う十四歳の少年です。両親の離婚を機に、十一歳から母親の故郷であるパリで暮らしています。
母親はマダム・ツバメと呼ばれる、フランスでは有名なジャズシンガーで、妖艶な恋に奔放な女性です。家事育児をほぼアウトソーシングしていたため、冬吾とのあいだには溝があり、顔を合わせるたびに喧嘩になっています。ツバメが自分を気に掛けてくれないことを、寂しく思っている冬吾ですが、本心を伝えられずにいます。
この日も、親子喧嘩のあと、冬吾はいつものように家を飛び出します。階下で母親のパトロンらしき男性とすれ違い、嫌悪感を抱きながら、彼の逃げ場所の一つである芸術図書館に向かいます。そこでカメラマン志望の若い女性に突然声を掛けられ、モデルになってくれないかと頼まれるところから物語は始まります。
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