透明人間

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 昨日、透明人間を見たんだ。いや、そう言うと『透明なのにどうして見えるんだ』と突っ込まれそうだけど、本当に見たんだ。  正確には、現れて消えるまでの一部始終を、だな。  会社の帰りに駅からの道を歩いていたら、電灯の明かりの下に人影がふいに現れ、すぐにすぅっと消えたんだよ。  透明人間だとすぐ思った。  でも、SFその世界ならともかく、そんなものが本当にいるんだな。  うーん。最近は科学が発展して、レーダーに映らないステルス機能とか、カメレオンみたいに周囲に溶け込む特殊素材の物質とかも開発されているらしいから、そういう物体を使っての、透明化の実験だっという可能性もある。  夜という時間帯も、闇に紛れる方が目立たないから、万が一騒ぎになっても逃げやすいだろうし。  だとげ俺としては、本当の本当に、自力で透明になることができる『透明人間』が存在している方が、夢があっていいんだけどな。 * * * 「透明人間だ!」  昨日遭遇した奴が俺を見てそう言った。  意外過ぎる言葉に思考が固まり、咄嗟に姿を消した。  俺、透明人間じゃなくて幽霊なんだけど、その発想はどこから出たんだろう。  SF好きとかなんだろうか。  ともかく、あいつの前に現れても、まったく別のモンスター扱いされるだけだから、今後は、あいつを見かけたら姿を現すのはよすとしよう。 透明人間…完
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