0人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはよっす!なんかあったんすか?」
誰とでも分け隔てなく話す人懐っこい性格の本井名が、喫煙室に入るなり右松に聞いた。
「は?」
「いや、なんか暗い顔に見えたんで」
そこへ、本井名と出勤が一緒だった高森が入ってくる。
「おざーす」
入るなり、煙草に火を付け、備え付けの椅子にドカッと腰を下ろす。
スマホを手に取り、毎朝の習慣となっている時事関連ニュースのチェックを始めた。
その間も、右松と本井名は、話を続けている。
「今年もボーナス無いってマジっすか?」
「うん。毎年毎年、期待する方が馬鹿みるけぇ。考えんようにしちょる」
「そうっすか。てっきりボーナス無いんで暗い顔しとると思ったんすけど」
「いや、違うんよ。今日ちょっと体調が悪いけぇ。なんか喉も痛いし」
「大丈夫なんすか?」
心配する本井名の言葉を待っていましたとばかりに即答する右松。
「う~ん……ちょっと休んどく」
「じゃ、午前中は任せて下さい。やっときますんで」
「いやぁ、助かるわぁ」
そう言って、二本目の煙草に火を付けた。
体調が悪く、喉も痛いなんて、とんだ嘘っぱちなのだ。
だいたい、喉の調子が悪いのに、平然と煙草を吸えるというのは可笑しい。
二人の会話が途切れた所に、高森が話に割り込んできた
「そういえば、右松さん。昨日、野之崎のガイオスにいませんでした?」
野之崎市のガイオスというのが、右松がアルバイトしているGSの名前だ。
スマホのチェックを終え、煙草をもみ消しながら高森が聞くと、右松は嬉しそうに答えた。
「うん。そうなんよ」
「そっすよね。いや、信号待ちで車止めたとき、チラッと見えたんで」
野之崎三丁目交差点の真横にあるガイオス。
そのため、信号待ちしていれば、車からでも働いている人の顔が確認出来る距離だ。
「実は、昨日からガイオスでバイトしとるんよ。初日から十時までじゃけぇ、帰ったら十一時。寝たのは一時半じゃけぇ、体調崩したんよ」
なるほどと頷き、本井名が口を挟む
最初のコメントを投稿しよう!