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 それからフィスキーへ背を向けると出口へと足を踏み出した。 「それと先に謝罪しておきますが、軍内には貴方を疑問視する声も上がっています。本当に任せて大丈夫なのかと。もしかするとそう言った者が無礼な態度を取るかもしれません」  その言葉に足を止めた桃太郎は背を向けたまま尋ねた。 「いいのか? 儂を試さなくて?」 「はい。その必要は無いでしょう」 「その為の刀じゃないのか? それとその銃もな」  ニヤリ、と口角を上げたフィスキーは背の裾を上げながら隠し持った拳銃を取り出し、桃太郎へ正解だと言わんばかりに見せた。 「正直に申し上げますと、一抹の不安はありました。英雄とは言え、貴方も老いてしまったのではないかと」  言葉と共にフィスキーは銃口を桃太郎へと向けた。 「ですがこうして顔を合わせてみれば、そんなものは使えない政治屋の戯言でした」  そして口を他所へ向けた銃は降伏だと腹を見せた。 「そうか……ならあの老い耄れで大丈夫かと訊かれたらこう伝えてくれ――」  途切れた言葉の後、部屋へ広がったのは穏やかな静寂。  そして僅かな沈黙の中、桃太郎はそっと振り向きフィスキーと目を合わせた。 「あれは儂の獲物だ、とな」  その声と表情は抑揚の無いものだったが――穏やかな雰囲気ごと押し潰してしまう程の威圧感が一瞬にして辺りを呑み込んだ。桃太郎の頭上へ蜃気楼のように鬼の形相を見てしまう程にそれは重く、鋭く、巨大。  そんな重力を倍増させたかのような圧力に有真は一歩だけ足を引かせ何とか立っているといった様子。そしてフィスキーは冷や汗を一滴、額に滲ませながら苦笑いのような表情を浮かべていた。
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