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 だが吉備団子を食べたはずの桃太郎に何の変化もない。 「あれ? もしかして失敗しちゃた?」  一瞬にして不安気な表情へと変わる有紗。  そんな彼女の前で桃太郎は腕を回してみたり軽く振ってみたりと色々試していた。 「いや、感覚は昔に戻ってる」 「でも見た目は渋オジのままだよ?」 「動ければそれでいい」 「ちゃんとレシピ通りやったけどなぁ」  だが依然と不満気な有紗は一人首を傾げた。 「とりあえず急に悪かったな」  そう言って肩をぽんと叩く桃太郎。 「いつでも大歓迎だって。でもそれが必要って事は……」  全てを察したのか、有紗は笑顔から笑みを残しつつも彼を心配する表情へと変わった。 「そうだな。だが、過去の脅威は過去の人間がそのままあの世に持っていかないとな」 「でも――気を付けてね」  今までで一番小さな声の有紗はそのまま桃太郎に抱き着いた。そんな彼にとって孫のような存在の彼女を大きな両腕は優しく抱き締め返す。 「あぁ。爺さんと婆さんの代わりに玄孫を見ないといけないからな。ちょっと自慢話を作って来るだけだ」 「二つも必要?」 「一つじゃ飽きられるかもしれんからな」  最後はお互いに笑みを浮かべると二人は離れた。 「本当に気を付けてね」 「また食べに来る」 「うん。待ってるから」 「それじゃあな」  有紗と哲也の二人と別れを交わした桃太郎と有真は蓬莱亭を後にした。
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