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 猿人族と人猿族はその殆どが森で村を築き生活している。一番の特徴としては、住居を含む村が木の上に作られているという点。地上に門や木塀はあるもののツリーハウス同士を橋で繋げ一つの村として暮らしているのだ。その為、ツリーハウス専門の建築家として働く者もおり特定ではあるがその分野で彼らの右に出る種族はいない。 「次は上だ」  言葉を口にしながら先に車を降りた桃太郎と後に続く有真。桃太郎は慣れた様子で傍の木へ行くと、そこに作られた足場を伝い上へ登り始めた。足場と言っても木にボルダリングのホールドのような突起物をくっつけただけでほぼ木登り。  しかし桃太郎は疑問を抱く事なくすんなり上へと登った。もちろん有真も苦戦などするはずも無く桃太郎に続き上へ。 「ようこそ。マイム村へ」  上り切り村への第一歩を踏み出した二人を聞き慣れた言葉で出迎えたのは猿人族の若者。茶褐色のふわふわとした毛に覆われ、背後で動く尻尾、双眸は黒い白目と綺麗な琥珀色。鮮やかな部族衣装を身に纏い、雰囲気も含め礼儀正しそうな青年だった。 「真獅羅様はこちらです」  そういって彼は二人を先導しながら村を歩き始める。村の中には案内の青年と同じ猿人族と人間族に類似しているが双眸と尻尾があるという程度の人猿族の二種族が混じり合っていた。だがそれはここが特別と言うより猿人族と人猿族は兄弟のようなもので大差はない事が大きいのかもしれない。  そしてあまり訪問者は来ないのか村の人々の物珍しそうな視線が桃太郎と有真へと集中していた。 「どうぞ。この中にいらっしゃいます」  村の最奥。他のより少しばかり豪華な作りの家へ辿り着くと若者は自分はここまでとドアの前で立ち止まった。  そして桃太郎はドアを開けると中へ。
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