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「久しぶりだな桃太郎」  二人が部屋へ入ると、まずゆったりとしつつもどこか荒々しい口調が出迎えた。  そこには部屋中央で座布団に座る人猿族が一人。白髪と顔に刻まれた皺、尻尾までも白毛で覆われており、傍には杖が置いてある。 「随分と老いたもんだな真獅羅」 「お前さんとてそうだろ。相変わらずと言うか、むしろ昔より体はデカい気もするが」  久しぶりの再会に笑みを浮かべ合う二人。  そんな中、真獅羅は入口で立つ有真へと視線を向けた。 「王国軍にでも入ったのか? 意外だな」 「いや。そんなものに興味は無い。ただ今はやる事があってな」 「お互い死ぬ前にって訳でもなさそうだしな。何だ?」 「こいつだ」  そう言って桃太郎は内ポケットから写真を一枚取り出しては真獅羅へ。  写真を受け取ると視線を落とした真獅羅だったが、すぐさま目を見開いた。 「まさか……」 「あぁ。王鬼が復活したらしい」 「復活? 確かに殺したはずだろ?」 「確かに首は刎ねたが、灰にはしてない」 「なんてこった……」  顔を片手で覆い首を左右に振る真獅羅。もし現状を知らずともこの場面を見れば何か良からぬ事が起きていると十分に理解出来る。 「――お前さん正気か?」  すると顔を上げた真獅羅は全てを理解したと言うようにそう問いかけた。 「そう急がなてももうすぐ死ぬ。俺もお前さんも」 「だがアイツは儂らより長生きするぞ」 「そもそも一体何が出来る? 歩くのすらコイツ頼りだ」  そう言って真獅羅は杖を手に取り振る様に見せた。 「戦うなんて昔の事だ。王鬼なんざ猶更な」 「なら昔を取り戻せばいい」  桃太郎は吉備団子の袋を取り出すと真獅羅へと投げた。
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