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 マイム村を出発してから少なくとも真獅羅がぐっすりと眠るぐらいの時間を掛け、一行はプルウィアへと到着。夕陽は水平線と握手を交わし薄暗くなった空で微かに星の光が顔を覗かせている。  しかし車はその手前で止まってしまった。 「恐らく自分は行かない方が良いでしょう。服装からしてゴーラン王国軍であることは明白ですので」 「用心に越したことはないな」  有真の言葉に納得した桃太郎は前の座席を叩き真獅羅を起こした。 「行くぞ」 「――あぁ? 何だもう着いたのか?」  寝惚け眼のまま車を降りた真獅羅は大きな欠伸をしながら桃太郎と共にプルウィアへと足を進めた。  内と外を区切る為の壁はあれど特に検問の類は無く出入りは自由。ゴーラン王国の領土内にあるものの唯一その干渉を受けない場所として別名、ピットフォールと呼ばれる街。またその特徴から他の呼び方も。 「さぁーて、行きますか。ならず者の街へ」 「確かお前の故郷だったか?」 「はぁ? ちげーよ」  笑みを浮かべる桃太郎に対して真獅羅は純粋に眉を顰めた。  プルウィアは入り口から街の中心広場まで真っ直ぐ一本の道が伸びている。エヌロードと呼ばれるその石畳の道はこの街で唯一の柄で造られており、この街で唯一の法律。  その道に沿って入り口から真っすぐ、中央広場まで進んだ二人。 「それで? 奇妓栖はどこにいるんだ?」  小さな円形の広場と言うには余りにも何もない場所から伸びた二つの線。エヌロードを除き、この街は三種類の石畳で分けられた地区で構成されている。そしてこの街を事実上、治めている組織も三つ。
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