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するとそんな真獅羅の隣へ一人の男が腰掛けて来た。ネクタイはない雑な着こなしのスーツに無精髭、少し禿げたオールバックの男は体を真獅羅に向けたまま座っており笑みを浮かべている。更に圧を掛けているのだろう、ネクタイを含めしっかりとスーツを着た部下らしき男が二人の後ろに並んだ。数は五人。
「よぉ。ちょっと話が聞こえてな」
「ルムナファミリーの奴か?」
「まぁな」
「なら話が早い。キロに会わせろ」
友好的で陽気な様子の男は真獅羅の言葉に控え目な声で笑った。
「何の為に?」
「お前さんには関係ない」
「そうかぁ」
そう言うと男は沈黙の中、人差し指と親指を口角に当てると内側へと摘まむように撫でた。
「まぁそうだな。理由なんてどうだっていい」
「話が分かる奴だな」
「話をするのは嫌いじゃない。馬鹿とはごめんだがな」
「誰だって疲れるのは嫌いだ」
「あぁ全くその通りだ」
男が先に小さく笑い声を上げると真獅羅も続けて鼻を鳴らす様に笑った。一見すれば仲が良く会話をしているようにも見える二人。だが互いに相手へ一切の隙を見せぬ様にし、笑顔の仮面裏では一瞬の火花が爆発を起こすような緊張的な雰囲気が漂い続けていた。
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