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それから店内にいた他のルムナファミリーも加勢し瞬く間に乱闘状態。
その様子を依然と座ったまま見つめていた男は溜息を零しながら真獅羅のウォッカを手に取ると一気に飲み干した。
「ったく」
呆れたようにそう呟く男の前を真獅羅が突き出す様に投げた部下がほぼこけそうな勢いで通り過ぎると、別の部下を壁に叩き付けた桃太郎が自分の方へやってきた部下を拳で迎えた。
軽やかに躱しては足払いで転ばせ、強烈な足技など華麗に戦う真獅羅。一方で桃太郎も的確に防ぎつつ反撃、カウンターで喰らわせたりと格闘技のようにしっかりと戦った。
そしていつの間にか十人程に増えていた部下全員をたった数分で立ち上がれぬようにした二人。だがその顔には掠り傷一つなかった。
「別に何かしようって訳じゃない。知り合いなんだ。こう見えてもな」
息一つ上がってない真獅羅は一人残った男に若干のドヤ顔交りの表情を向けていた。
その隣で残ったお酒を飲み干す桃太郎。
「一言、桃太郎が来たと伝えてくれさえすればいい」
グラスを叩きつけるように置きながら桃太郎はそう付け加えた。
「桃太郎……」
その名前に反応を見せた男は僅かに眉を顰め桃太郎へ視線を突き刺した。
するとその時。お店のドアリンが来客を知らせた。その音にマスターを含む全員の視線がドアへと向く。
「一体誰のシマで暴れてるのか分かってるのかい?」
その声と共に店内へ入って来たのは、派手なドレスと帽子を被った細身の老婆。その後ろには屈強な大男と相反するようにスラっとした優男が並んで続いていた。
すると男は老婆の姿を見るや否や立ち上がり軽く頭を下げた。
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