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「久しいな奇妓栖」  真獅羅の隣へ並びそう口にした桃太郎。  一方でその言葉に老婆は桃太郎の前まで足を進め顔を覗き込むように見つめた。真っすぐな背は真獅羅と余り変わらない。 「その声……桃太郎。髭なんか生やして。随分とアタシ好みになったじゃない」  そう言って桃太郎の頬を軽く叩いた。 「お互い老いただけだ」 「そうね。あの時から老いるには十分過ぎる時間が過ぎたもの。アタシも今じゃこのルムナファミリーを束ねるマダムキロ。変ったわ」 「ボスになったのか? 随分と出世したじゃねーか」  感嘆交じりの声に奇妓栖は横目で真獅羅を見遣る。 「坊やはちゃんと躾けなきゃダメよ。アタシが言うんだから間違いない。にしても人猿族だなんて……面倒な顔を思い出すわ」 「あぁ?」  自分だと気が付いてない事に真獅羅は少し顔を顰めた。 「まさにその面倒な奴だ」  奇妓栖は一度桃太郎へ戻した視線ごと顔を真獅羅へと向けた。 「真獅羅? でももっと死にかけのジジイになってるはずじゃなくて?」 「誰が死にかけだババア」 「その口の悪さ。本当みたいね」  すると奇妓栖は真獅羅の頬を握り潰す様にしたから掴んだ。 「昔アンタのとこの若造がここで粗相したのを忘れたのかしら? その時、間に入ってあげたのは? あの時はまだ幹部ですらなかったアタシが自分の首――いえ、命を賭けてあげたのを忘れたとは言わせないわよ?」 「ふぁふぁってる(分かってる)」 「アンタはアタシに途轍もない借りがある。二度とそんな口は聞かない事ね」  最後は乱暴に真獅羅の顔を放り投げた。
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