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「その紋章、ゴーラン王国軍か。しかも総司令部とはな。内部の事は良く知らんがその若さで所属できる場所でもないだろう」 「仰る通り総司令部は軍の中でも素晴らしい場所ですが、自分はまだ上官らの足元にも及びません」  同時に向けられた真っすぐな眼差しは、その言葉が本心である事を証明するには十分過ぎる程に穢れのないものだった。 「なるほど。それで? 王国軍がこんな老体に何の用だ?」 「はい。今回はゴーラン王国軍総司令部、最高司令官チェイン・フィスキーの命により、貴方様をチェイン・フィスキー最高司令官の元へお連れする為、お迎えに参りました」  この場所へ来て何度目なのか、だが何度見ても一切のブレが無い完璧な敬礼と共に男は用件を口にした。 「儂に選択権は無いという訳か」 「いえ! チェイン・フィスキー最高司令官からは貴方様の都合に合わせるよう言い渡されています。ですがかなり緊迫した状況な故、可能な限り早々にお願いしたいと」 「緊迫した状況か……」  小首を傾げながらもう一口水を飲む桃太郎は何かを考えている様子。 「ところで名前は何だ?」 「申し遅れました。私はゴーラン王国軍総司令部、瀧野瀬有真と申します」 「では有真君。早速、行くとするか。だがその前に準備がある」 「はい。では私は軍用車の方で待機させて頂きます」 「出来る限り早く済ませる」  それから軽くシャワーを浴びた桃太郎は家の前で待つ有真の元へ行き、乗り込んだ軍用車は王国へと出発した。
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