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いいねをする人を断罪する彼女の末路
会社の同期であり友人の彼女は、やや扱いにくいところがある。
男性不信、いや男性蔑視的というか。
「これだから男は」が口癖だし、男性がすこしでも口を滑らせれば「この女性者別主義者!」と激怒。
この点以外は気が合ったので、あまり地雷を踏まないよう、つきあっていたのだが・・・。
わたしには応援する男アイドルがいて、暇さえあれば、彼のツイッターを確認。
三十分おきくらい投稿するに、一日の呟きの量は膨大。
なので、仕事がある日は、いちいち読んでいられず、とにかく「いいね」ボタンを押してスクロール。
休憩時間、なんとか新しい投稿すべてに「いいね」をして仕事にもどったところ。
別の部署にいる彼女が、わたしのデスクまでやってきて。
仕事の用かと思いきや「あんた、なに、アイドルの女性差別発言にいいねしているのよ!」と金切声を。
「アイドル好きは秘密にしていたのに!」とぎょっとしつつ、内容を知らずボタンを押したことを説明。
が、「いいねをしたのは当てつけでしょ!」と被害妄想まっしぐら。
「女性を擁護するわたしを、内心『哀れなヒステリー女』と嘲笑っていたのね!
あんたみたいな女の敵の女なんか、もう二度と近づかないでちょうだい!」
絶交宣言をして彼女が去っていくと、まわりは呆れながらも「友人との喧嘩はよそでやれ」とわたしを責めることはなく。
というのも、彼女の過激な言動は今にはじまったことではなく、周知だったから。
わたし以外に被害にあった人は多く、この一件でさらに迷惑をこうむることに。
なんと、彼女はネットの検閲まではじめたらしい。
彼女と縁を切ってから「ありゃ、ネットストーカーだ」と怯える人が続出。
「いいね」を押すのにはじまり、すこしでも女性差別につながる行為を、ネットですれば、すぐに彼女は跳んできて、相手を糾弾するのだとか。
ついには各部署の業務をきたすまでになり、でも、会社は注意したり、クビにすることはできず。
「こんな不当なしうちは女性差別だ!」とさらに騒ぎたて、面倒になるのは目に見ているので。
彼女の噂を聞くにつれ、引き金を引いたのが自分のように思えて、ため息。
「おかげで、いいね押せなくなったし」と休憩室でスマホを見ていたのが、ふと顔をあげたところ。
窓越しに、頭を逆さにした彼女と目があった。
次の瞬間、視界から消えて、下から車のブレーキ音や人の悲鳴などの騒音が聞こえて。
ネットパトロールしまくって怒り狂い、正気を失くした彼女は屋上から跳びおりたらしい。
そう、ひそひそと囁く会社の人の顔には安堵の色が。
それを見て、さすがには彼女を哀れんだものだが、あの一瞬を思い起こすに寒気が。
彼女は落下するというより「いいね」の形をした巨大な手、その親指に押されているように見えたのだ。
そのまま地面に押しつぶされたのだろうか。
幻覚だろうとは思うものを、笑い過ごせずに、わたしはアカウントを消したのだった。
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