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スマホに黒ずくめの女が写ったら死ぬ
スマホに黒ずくめの女が写ったら一週間後、死ぬ。
なんて怪談めいた噂が広まっている。
詳細は知れず、呪いを解く方法も不明で、憶測がとびかうばかり。
まあ、俺はめったにスマホで撮影をしないに、さほど気にしなかったが、友人のことが、すこし心配。
癖のようなもので、なにかとスマホを向けがちだから。
今も猫の死体を撮影中。
猫をどうすればいいのか、俺が役所に連絡をしている間のこと。
電話を切って「おい、やめろよ」と注意するも、スマホから目を離さず。
ふだんのつきあいで、とくに友人に不満はないが、この「なんでも撮りたがる病」には、やや辟易。
友人に限らず、やたらめたら人が撮る動画や写真を見ていると、眉をひそめることが多い。
今の世は、内容のよしあしはあまり関係なく、衝撃的な動画や写真がもてはやされる。
なかには「撮っている暇があったら助けなよ」と苦言したくなるのも。
事件や事故はもちろん、子供や動物を撮影したほほ笑ましいものでも、対象が恥をかいたり困ったりするのを見ると、複雑な思いに。
「撮影に心を奪われるあまり、残酷なしうちをしている自覚がなくなるんじゃないか?」
そう忠告したこともあるが「重く考えすぎ!」と友人は笑いとばしたもので。
呪いの噂にしろ、友人は屁の河童でスマホ撮影をつづけていたのだが。
急に友人からメッセージで「夕方のニュース見ろよ!」と。
いやな予感がして、指定された時間帯のチャンネルを視聴したら火事の報道が。
流れた映像は、燃えさかるビルから人を担いだ何人かがでてくるというもの。
人にモザイクがかかっているとはいえ、凄惨な現場の生生しさが伝わって。
思わず目を背けたらスマホが震えて「これ、俺撮ったんだよ!」と友人が嬉嬉としたように。
「たまたま通りに俺しかいなくて、独占して正面から撮ったわけよ!
おかげでテレビ局がかなり払ってくれたぜ!」
とうとう、ここまできたか・・・。
すっかり呆れて返信をせず、もう映像が終わったかとテレビに向いたところ。
なぜか、道路に倒れた人のモザイクがとれて、お目見えしたのは、そう、黒ずくめの女。
おもむろに立ちあがると、腰まである長い髪を揺らしながら、スマホに向かい歩いてきた。
長い髪が前にも垂れて顔は見えず。
間近にきたなら手を伸ばし、そのまま画面を突きぬけてくるように見えて、つい目を瞑った。
が、しばらく経っても、なにも起きず。
瞼を上げれば、テレビは真っ暗。
俺を含めて大勢の人が、この黒ずくめの女を見たらしい。
もちろん友人も。
そりゃあ、俺も友人も「一週間後、死ぬのでは」と気が気でなく。
友人などは家に引きこもったもので。
結局、だれも死ななかったとはいえ、以降、友人はぱったりとスマホ撮影をやめた。
「極端じゃないか?」といえば「おまえには分からないよ!」と泣き叫んだもので。
「彼女の死体を笑いながら撮った男のように、人でなくなるのはごめんだ!」
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