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プロローグ
僕の見るべき世界を見るまでに。
この目で。
何を見ればいいのだろう。
だけど。
時に思う。
この目で見ているものは、本当に必要であるものなのかと。
もしもこの現状が、なんら関係のないものならば。
もう……何も見たくはない。
鬱蒼とした森の中に馴染む、闇に紛れた居住地。
寝る為だけの部屋はベッドだけが置かれ、コンクリートが剥き出しの壁が、更に冷たさを強調する。
それでも、他に必要なものなどなかった。
陽が昇ろうとも、僅かな光しか差し込まない、小さな窓にも不満はなかった。
手足を縛られてなどいなくとも、まるで牢獄のようなこの場所にいるのは、僕が生き続ける為の条件だった。
だけどそれは、僕が望んだ事じゃない。
僕の日常は、ある日を境に一変した。
ドアがノックされる音で、目を覚ます。
起床の合図は、決まって真夜中だ。
僕は、ベッドから身を起こし、部屋に入って来る人物を待つ。
「目覚めはいかがですか?」
部屋に来た男は、穏やかな笑みを見せてはいるが、目は笑っていない。
冷ややかに見えるのは、眼鏡の所為なのか、それが本性なのか、なんにしても僕はまだ、この男を信用してはいない。
「……最悪だよ」
そう答えると僕は、髪をクシャクシャと掻き、大きな溜息をつく。
「そうですか。それはなにより、ですね」
「なによりって……僕はここに居る事を、納得した訳じゃないからね」
「君の承諾など得る必要はありませんから」
「ああ……そうだよね……」
僕は、ベッドを下り、立ち上がる。
真っ直ぐに男を見つめ、ふっと笑みを見せると僕は言った。
「僕は、禁忌を犯した『罪人』だもんな」
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