頑張る

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頑張る

 園は徐々に悲しみから離れ、日常を取り戻していく。  様々な行事、季節の花、雲は流れ、光が差す。誰も立ち止まることはできない。  子どもたちも保護者も職員も明るさを取り戻し、生き生きと活動する。  そんな中、先輩が体調を崩した。快活な、私と同じクラスの担任。  1週間の入院とその後1週間の自宅療養が必要とのことだった。  どうやらご家庭で思春期のお子さん達とバトルがあり、ストレスをためたらしい。  その間、補助の先生が臨時で入ってくれたが、私の業務は大幅に増えた。  私は働いた。早朝に出勤し、帰りは遅くまで残業。  園長も他の先輩達も手伝いを申し出てくれたが、それぞれ抱えている仕事もあり、そんなには頼めない。  私は笑顔で働いた。たった2週間ですから。若者は働きますよ。任せてください。大丈夫です。  子どもたちには不安が広がらないように、いつも以上に気をつけた。 「あと○回寝たら、先生が帰ってくる日」  毎日帰りの会でピアノに合わせて歌って、それまでみんなでいい子にしていよう、と約束した。  母には事情を話しておいた。心配顔だったが、協力してくれた。いつも以上に栄養のある食事を用意してくれた。いつも私がやっている家事も引き受けてくれた。  事情を話したと言っても、母は仕事に理解はない。泣き言は言えない。自分で頑張るしかない。  頑張る自分を、もう1人の私が傍で見ていた。
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