大遅刻!でも。

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大遅刻!でも。

 忙しい1週間が過ぎた。  週明けからは先輩が復帰する。  業務も通常に戻る。  金曜日の夜、ホッとして眠りについたら、土曜日の朝、ものすごく寝坊した。  朝というか、起きたら13時だった。  すごい寝たなー……と起き上がって、青くなった。  重岡さんとの約束。  12時の待ち合わせだった。  慌ててスマホを確認する。  メールは来ていない。  とにかく、と思って、 『ごめんなさい、寝坊してしまいました。急いで支度して出ますので、もう少しお待ちいただけますか?』  メールをした。  大急ぎで化粧をして、服を着替える。髪を整えて、家を出る。  電車の中で確認したけど、メールの返信はなかった。  怒っているだろうな、もういないかも。  でもとにかく、と約束のお店に向かう。  到着したのは13時45分、2時間近く遅刻だ。  待ち合わせたのは、カフェのオープン席だった。  予想に反して重岡さんは、穏やかな顔でそこにいた。  息を切らせて、 「ごめんなさい、大遅刻してしまって」 頭を下げると、 「こんにちは。今日はありがとう」  笑顔を向けられた。  怒ってない。 「怒ってないですか?」  泣きそうになりながら問いかけると、 「いや、全然」  本当に怒ってないようだった。  今日も、この前と同じように、気を使っていない普段着のような服装だけど、何故か雑な感じがなくて、清潔感がある。  そういえばこの前も、清潔感あるなあと思ったんだった。 「何か食べましょう。それとも食べないで飲み物だけ?」  落ち着いた声。のんびりした感じがする。こっちまでリラックスしてしまうような雰囲気。 「お腹すきました。何か食べましょう。お詫びにご馳走させてください」  重岡さんはクスッと笑った。 「お詫びって大げさだけど、せっかくだから甘えます。食べましょう、美味しいもの」  妙に遠慮しないところがいいな、と思った。  
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