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2人で仕事
その日は仕事を持ち帰った。
クラスの子供の人数分、画用紙で日本の国旗とバングラデシュの国旗を作って紐に通す作業。
先代の園長はバングラデシュの幼稚園と交流があり、今でも時々手紙の交換をしているようで、子供達もバングラデシュについて学ぶ機会を定期的に設けている。
それにしても、さすがに疲労が蓄積している。
夕飯とお風呂の後にやろうと思っていた。
駅に着いた時、メールに気づいた。
重岡さんだった。
心臓が音を立てる。
『もしよかったら夕飯ご一緒しませんか?』
思わず顔がほころぶ。
嬉しい。誘ってもらえた。この前遅刻したの、本当に怒ってないんだな。良かった。
一緒に夕飯食べたい。会えたら疲れも吹っ飛ぶのに。会いたい。顔が見たい。
ああ、だけど持ち帰りの仕事が──。
現状、無理できる体力はない。ここは素直に。
『ぜひご一緒したいのですが、今日は仕事を持ち帰っていて』
『それはお疲れさまです。その仕事、俺が手伝えたりしませんか?専門的なことですか?』
びっくりした。こんなことを言ってもらえるなんて。
『全然専門的じゃなくて、画用紙で国旗を作って紐に通す作業で』
『手伝います。そちらに向かいます。駅に着いたらまた連絡します』
呆気にとられた。
手伝う?作業を?彼は幼稚園の先生じゃないのに?
慌てて母に電話する。
『幼稚園の先輩と夕飯食べて帰るから、遅くなる。ごめんなさい』
もっと早く連絡してよ、と母は不機嫌だった。
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