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改札で待っていたら、重岡さんはすぐに来てくれた。
顔を見たら、すごく嬉しくて、疲れていたのが嘘みたいに元気になった。頬が染まる。
「こんばんは。急にすみません」
重岡さんはジーンズに薄いグリーンのパーカーを着ていた。
「こちらこそ、手伝っていただけるなんて。ありがとうございます」
私は通勤用のチノパンにロンTという、全くの普段着で、こんなことならもっとかわいい服を着てきたかった、お化粧も直したかった、なんて見当違いなことを思っていた。
近くのファミレスに入って、とりあえずドリンクバーを注文してから2人で作業をした。
白い画用紙と緑色の画用紙を同じ大きさに切って、真ん中に赤くて丸いシールを貼る。国旗の端っこを折ってテープで止めて、紐を通す。
この作業を30人分。
重岡さんはこの単純作業を、楽しそうに手伝ってくれた。
「へえ、バングラデシュの国旗って、日本と色違いなんですね」
なんて言いながら。
無骨な手は、思いの外器用だった。ハサミもテープも扱いが優しくて、こういうところにも人柄が出るんだな……と私も楽しかった。
2人でやったら、あっという間に30人分出来上がった。
1人でやると、いつまでも終わらない感じでため息が出るのに。
「出来ましたね。良かった良かった」
私がホッとする、あの笑顔を見せてくれた。
「ありがとうございました。助かりました」
頭を下げたら、ぐーっ、とお腹が鳴った。
恥ずかしい!!
赤面しながら、あのこれは、と言い訳しかけると、重岡さんのお腹もぐーっと鳴った。
顔を見合わせて、笑ってしまった。
「何か食べましょう、さすがにお腹すきましたね」
「お腹すきました!今日はお礼にご馳走しますから、お好きなものを召し上がってください」
「いやいや、この前もご馳走になりましたから、今日は俺が奢るつもりで……でもそれだと川澄さんが気にしますね。じゃあ割り勘にしましょうか」
この人は本当に、私の気持ちを楽にしてくれる。
結局この日は2人で色々注文してシェアして食べた。どれも美味しかった。
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