両親の見解

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両親の見解

 家に帰るとめずらしく父が帰宅していて、母と2人で色々尋問(じんもん)してきた。  普段そんなに会話しないくせに、こういう時はタッグを組む。夫婦ってそんなもの? 「幼稚園の先輩ってウソでしょう。本当は誰といたの?」  隠すことでもないので、素直に伝える。  今日は重岡さんが作業を手伝ってくれたこと。  その後2人で食事したこと。  重岡さんとは、あーちゃんの紹介で知り合ったこと。  帰国子女で、今は会社勤めじゃなくて自分で仕事をしていること。 「お付き合いしてるの?」  母が心配そうに聞く。 「してない。お友達だよ」 「お友達、ね」  父は普段通り、上からものを言う。 「聞く限り、お友達のままが良さそうだな。……俺は休む。おやすみ」  自分の言いたいことだけ言って、寝室に引き上げる。これも普段通り。  吹っ飛んだはずの疲れが、体に戻ってくる。  母も遠慮がちに、 「お母さんも、お友達のままがいいと思う」 と言う。 「そう?……おやすみなさい」  私は言葉少なに部屋に引き上げる。  付き合ってないって言ってるのに、2人ともなんで結婚相手としてジャッジしてるんだ。  結婚相手として見るなら、2人とも、重岡さんが会社勤めをしていないことが気に入らないんだろう。  いや、例え会社に勤めていたとしても、その会社がどんな会社か、その中でどんなポジションにいるか、給料はどうか、そんなことで彼をジャッジするに違いない。  言わないけど、父は私の仕事も心の中ではバカにしている。幼稚園の先生なんて、と。だけど結婚すれば辞めるから、それまでのことだと思っている。  結婚して仕事やめるなんていつの時代だよ。  昭和か。  馬鹿野郎。  こんな時──父に踏みつけにされた時、いつも心の中で叫ぶ。  お父さんなんかどっかに行ってしまえ。  私の人生から出ていけ。  さっとお風呂に入って、その日はすぐに寝た。  こんなことで傷つくもんか。バカバカしい。  もう1人の私が傍で見てる。冷たい目で。
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