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訃報
ある日、1人の女の子が休んだ。小夏ちゃん。朝は詳しいことを聞く時間がなかった。
皆が帰ったあと、先輩が固い表情で教えてくれた。
「感染症なのよ」
一瞬、何のことかわからなかった。
「軽くないの。入院したって。しかも集中治療室」
ますます何のことかわからない。だって元気だった。歌だって大きな声で歌ってたし、お弁当だってたくさん食べてた。
集中治療室?
「隔離されて、お見舞いにも行けないけど、メッセージとか折り鶴とか……届けよう。園長から話があるから」
先輩は私を見なかった。瞳に力がなかった。
普段は快活な先輩のその様子が、小夏ちゃんの状態が予断を許さないものであることを告げていた。
私は言葉が出なかった。
小夏ちゃんが入院したことは、次の日には職員だけでなく園児や保護者にも知らされた。
メッセージや折り鶴が続々と園に届く。私はどこか他人事のようにそれを眺めた。
すぐに退院して、園に戻ってみんなで遊んで……そんなことを疑いもしなかった。いや、疑いたくなかった。皆何やってんだろうとすら思った。
でも、いつまで経っても小夏ちゃんは退院しなかった。
メッセージや折り鶴が一通り集まった後も、退院の報はなかった。
朝のお祈りの時間に、小夏ちゃんの回復を皆で祈るのがルーティンになりつつあった。
それはある日、不意にもたらされた。
訃報。
職員の朝礼は涙で溢れた。
これから登園してくる子供達を、赤い目で迎えられない。
だけど、だけど!
もう誰も、嗚咽をこらえることができなかった。
園長もそれを咎めなかった。園長も泣いていたからだ。
たった4歳なのに。全ては輝いて、これから始まるところだったのに。
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