渡せないもの

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「次は貴方が答える番です。貴方は何故ここに?なにをしているんです?」 彼は彼女の目を見据え尋ねた。その瞳はきちんと彼女を写していた。彼女は、彼の変化に戸惑いながらも苦笑いをして 「私はそうですね。特に目的もありません。てきとうに歩いていました。そうしたら綺麗な場所を見つけたので夜景を眺めていたら寝てしまったようです。」 そう答えた。そして 「面倒くさいのでタメ口で良いです。というか君、私より年下よね。大人びて見えるけど。」 と訝しげな顔をした。 「チッ」 どこらともなく舌打ちが飛んできた。 「ちょっと生意気!舌打ちはさすがにダメでしょ~。というか舌打ちするってことは図星でしょ~!」 「空耳では?」 彼はわざとらしく綺麗な笑みを浮かべた。彼女は、 「そんなわけないでしょ。嫌みったらしい微笑みね。」 と、ふてくされた。 「というか敬語じゃなくていいわよ。」 「いえ、いくらそんなりでも年上のようですので」 彼から見た彼女は小さかった。背も高くなく腕や脚は細い。とても年上には思えない容姿だ。 「あー乙女の体型けなすなんて最低ね~。そんなんじゃもてないんじゃない?」 彼女はニヤニヤしながら言った。 「いえ、僕はいつも選ぶ側でしたから。」 嫌みなほどに綺麗な笑みをかえす。 「うっわ。最低な男ね~」 そんな子供のような討論を続けていたらいつの間にか日は沈んでいた。不意に 気がついた。 ご飯を食べていない。 気がついてしまえば途端にお腹がすいてきた。
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