渡せないもの

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グウウウウ 誰かの腹が鳴った。彼が彼女のほうをみると彼女は 「ち、違うからね!」 と顔を赤くして手を振った。 「腹減ってるのか。」 彼はそう言うと先ほど落としたビニール袋を探しに向かった。ビニール袋はすぐに見つかった。彼は中身がぐちゃぐちゃになっていないか確認をすると、彼女の元へ歩き出した。やがて彼女の元につくとおもむろにおにぎりを投げた。座っていた彼女は慌てたように手を差し出し迫り来るおにぎりをキャッチした。 「危ないじゃない」 落ち着いた声だった。 「腹減ってたんじゃないの?それとも腹が減りすぎて元気ないのか?」 「さあ、疲れたのかも。おにぎり返すね。私もう眠いし。先に寝てもいい?」 そう言って彼女はおにぎりを投げ返してきた。彼はそれをキャッチすると尋ねた。 「別にいいけど夜中腹減らないか?」 「その辺は大丈夫。なに?心配してるの?それとも私が先に寝て一人になるのがさみしいの?」 そう言って彼女はニヤニヤし始めた。 「は?なに言ってるの?頭大丈夫?」 彼は心底不思議そうな顔をして言った。 「失礼ね!」 彼女はそう不満げに言った。そして尋ねた。 「貴方、いつもそんないいかたしてるの?まあ、今のは私が先に揶揄ったけど貴方の表情見るに本当に不思議がってるわよね。勘違いされるわよ」 「…」 彼はなにも言わなかった。 「まあ、いいけど。私は気にしないし。勘違いもしないから。じゃあ、寝るね。おやすみ」 彼女がそう言って寝転がってからまもなく寝息が聞こえた。
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