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初ノ花怪異談08話雨クジオンナ
1.
ーー????ーー
毎年梅雨入り時になると、決まってあるモノが見かけるようになる。
それは"雨クジオンナ"ーー。
彼女は何者でもなく決まって心がどんよりとした気分になるとき決まって取り憑かれるようになる。
害はないがそのオンナを見るたびにさらに気持ちがどんよりした気分になることはたしかである。
そんな物語である主人公八木楓も雨クジオンナに振り回されるようになる。
八話 雨クジオンナ
ーー野花小学校通学路ーー
「おはよー。あーちゃん」
「おはよー。たーちゃん」
俺と亜華葉は近所で幼馴染だから、いつも親しみ込めて挨拶する仲だ。
しかし、もう1人の近所で幼馴染のかーちゃんは来てない。
いつもならば俺たちと同じ時間帯に来てもおかしくないだろうな。
まー。このジメジメとした感じの梅雨は学校に来たくないのは無理はねーけどな。
「どしたの?」
「いや、あのさ「おはよー。みんな!」」
と、噂をすればなんとやらば、遅れて駆けてきた少女は俺と亜華葉の腐れ幼馴染の近所の八木楓。
いわゆるかーちゃんだ。
今日もカイダンセイバーズは活動できますかね?
ーー学校内ーー
「今日限りカイダンセイバーズ解散するから」
まさか、解散宣言は覚悟してたけど本日とは思わなかった俺たちであった。
2.
ーー八木家ーー
「「かんぱーい♪」」
私たちはカイダンセイバーズ解散を記念とした打ち上げパーティをやった。
パーティ会場は私の家である。
ちょっとしたパーティだが草虫もいる。
しかもちゃっかり名刺交換しなくていいからお母様!?
しかし、カイダンセイバーズも現メンバーのみだ。
残りのメンバーは誘えない雰囲気だったから。
彼らも彼らの居場所があるから。
そんな気持ちだったから、取り憑かれたかもしれない。
ーー雨クジオンナに。
「……」
ーーーー。
3.
ちょっとしたパーティ会場の次の日の朝。
私の部屋に雨クジオンナが現れた。
彼女自体害はないが、ジメジメしてどんよりな気持ちになる。
だから、私自身なんだか腹立たしかったから。
いろいろとやった。
お絵描きもした。勉強もした。テレビゲームもした。ピアノも弾いてみたり作曲もした。友達も遊んだ。料理もしたが何故か私の前には雨クジオンナがずっと取り憑かれている。
もう梅雨明け宣言になれば自然と雨クジオンナは消えるだろう。しかし、その前に消したかった私は何があろうと梅雨明け前に消そうと努力しても何故か消えない。
消えろ。消えろ。消えろ。と心から念じても消えない。
私をまるで小馬鹿にしたかのように消えないそいつは。
私は咄嗟にスマホンを取り出してカルをしても消えないことはわかってる。わかってるけどこのモヤっとした感じ方が嫌いだった。
そんな時にあの人が優しく肩を叩いてくれた。
「楓?どうした?泣いてるのか?」
泣いてる?私が?でも言われてみれば私はすでに泣いてることに気がついてた。
その時、私自身泣いていたことを忘れていたのだ。
だから、私はその人に正直な気持ちをぶつけてみた。
するとその人は何も言わず黙って耳を傾けて全て聞いた後、どこかでムシして行ってしまった。
すると、しばらくして私の前に以前抜けたカイダンセイバーズメンバー達と解散した現メンバーもやってきた。
「聞いたぞ!おまえ達だけでパーティするなんてずるいぞ!俺たちも参加しろよな?俺たちもきちんとケジメつけたいからな」
草つよしは相変わらず似合わないクサイセリフを放ったの見て、私はクスと笑った。
そして改めて私たちカイダンセイバーズ全メンバーと華やかなパーティを行った。
会場はクラス内だ。
当然、メンバーに関係してないクラスのみんなや何故か虫男のバンドメンバーが来てるのは草理解不能だがそれでようやく私たちがきちんとケジメをつけた解散パーティだった。
それが私の心の中で吹っ切れたのか、雨クジオンナも忽然と姿を消した。
私にとってこの怪異談は心に残る話ね。
「おしまい♪」
ーー現在ーー
「よかったよ。八木さん」
「ありがとう。桜さん」
高校生になった私は今でもこの怪異談を懐かしく披露する。
カイダンセイバーズはすでになくなったが、石山県内では似たような部活があるみたいだ。
そんな時に私はこの怪異談を披露する時、彼らを懐かしく思い出に浸るのである。
そして高校生から私の怪異談活動も本格的に動くのである。
そう、私の怪異談を聴いた者は不思議な野花を咲かせるのであるからーー。
出演登場人物
八木楓
梅田虫男
野花手鞠
王田つよし
亜季田礼奈
羽根川修二
鳥河大軌
夢見亜華葉
米金幸子
初ノ花怪異談 完結
作:野花まり
雨クジオンナ 完
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