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シーフード味
腕を大きく上に伸ばして、ふーっと疲れを吐き出すように息をする。
身体が重く倦怠感も感じるが、それが薬の副作用のせいなのか、慣れない本を読んだことに起因するのかはわからない。
目頭をぎゅっと押さえて読みかけの本を閉じた。やはり普段から活字を読まない人間が、一気に読み終えるのは難しいらしい。
それでも、俺にしては集中して読み進めた方だった。
視線を少し上にあげて時刻を確認する。
「…あれ?」
十八時と表示された時計を見て、俺は何度も瞬きをして目を擦った。
おかしい。まだ三十分しか経っていない。
以前小説を読んだ時には半分を読み終えるのにかなり時間がかかったはずだ。
余程集中して読んでいたのか。それとも読書の才能がいまさら開花したとでもいうのだろうか。
「合ってるのか?この時計」
ジッとデジタル時計を見つめて、飲みかけのコーヒーを一口すする。
ほのかに温かみを感じることで、時計の時間が大きくずれているわけではない事がわかる。
理由は一向にわからないが、時間を潰せていない現実に深く頭を垂れた。
「そういえば小腹がすいてきたな」
夕食は二十時と言っていたが、間食をしても問題ないと林田が言っていたことを思い出した。
早速お菓子やらカップ麺が置かれた棚の方へ向かう。
物色してみると品ぞろえも豊富で特にカップ麵の種類に目を惹かれた。
俺はシンプルな醤油味が一番好きなこともあり迷わず手を伸ばすが、手に取ったところで思いとどまった。
そういえば、相沢のやつが「シーフード一択すよ。マジでこれ以外ないすね」とかなんとかバイト中に言っていたか。
いままでなんとなく食べてこなかった事もあり、この機会に試してみるのもありかもしれない。
醤油とシーフードのカップ麺を取り換え、電子ポットにお湯を入れて作る準備を始めた。
湧き上がるのをひたすら待つ。たった数十秒のことですら遅い気がする。一度時間の進みが気になってしまうと、なかなかそれを無視するのが難しいと、俺はコンビニバイトで嫌というほど知っている。
ぼーっとした時間を過ごし、ようやく沸いたお湯をカップ麵に注いだ。
待っている間に続きでも読もうと本を手に取って、読み進めたページまで遡った。
どうにも身体の動きが鈍い気がするが、眠気はなく意識ははっきりとしている。副作用だとしても問題はないだろう。
時刻は十八時二分だ。まだ始まって一時間も経過していない事にうんざりしながら、カップ麵が出来上がる三分間を待つことにした。
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