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失恋初日
私、本田舞はバスルームを暗くすると、イランイランのアロマキャンドルをともす。自分への最高のご褒美タイムだ。
そして風呂上がりには髪をターバンでまとめ、左手を腰に当てながら牛乳をグビグビ飲む。
寝る前には軽くストレッチ。これが毎晩のルーティンであり、明日への活力となっている。
短大に通い、歯科衛生士を目指しているが、想像していたより忙しい。そんな日々の終わりに、リセットは欠かせない。
寝る前にスマホを見ることはしない。睡眠の質が悪くなるからだ。
ただし例外がある。あの人からのメッセージには即レスする。親友の晴美から紹介された他大学の4年生、雅彦。あの人のメッセージだけ、通知オンにしているのだ。
ーー今夜もきた!
〈おーい!〉
私はすぐに茶化して返す。
〈おーい! 俺だよ、オレオレ!〉
でも今日の雅彦はなんだかいつもと雰囲気が違う。
〈バイト中にメッセージ送ってきたよね?〉
もしかして怒ってるのだろうか。
〈バイト中にメッセージ送られても、返事返せないよ〉
〈わかってるよ。返事は時間あるときに返してくれればいいよ〉
私は思ったことをそのまま言う。
〈俺はね、自分のペースを掻き乱されるのが嫌なんだよ〉
そうだったっけ? 考えつつも謝る。
〈ごめんね。これからは気をつけるね〉
私はスマホを打つ手を止め、ベッドに寝転ぶと天井を見上げた。
私たちは今まで特にケンカをしたこともない。彼はいつも穏やかでニコニコしているのに。
〈明日彼女が留学から帰ってくるんだよ。ややこしいことになりたくないからブロックするね〉
ーーえ! 今、「彼女」と言った?
〈彼女いたの?〉
慌ててメッセージを返すも既読がつかない。通話を試みても、呼び出し音が鳴ったあと、強制終了してしまう。
本当にブロックされてしまったようだ。
ーーもしかして私、失恋しました?
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