3章 人気の合わせ味噌 ~焼きネギと舞茸入り贅沢豚汁~

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 唐突に、扉が開いた。午後二時になろうとしているところだった。  扉の前に立っていたのは、アキと年齢の近い若い女性。二十代中盤の女性は、ダークブラウンでひし形シルエットのミディアムヘア―。ジャケットにパンツスタイルの、カッコイイ系丸の内OLみたいだ。  容姿も整っており、手足もスラッと長い。  その女性を見た瞬間、アキは劣等感に苛まれた。こんなに早く、自己嫌悪が襲ってくるとは……それほど完璧な女性が来店された。 「いらっしゃいませ。ここ座って」  倉持が座った時と同じ、アキが座っている場所から一番離れた端のカウンター席。  女性と目が合ったアキは、軽く会釈する。  サリがアキに耳打ちで「さっきの話はまたあとでね」と囁く。 「なんか年季の入ったお店ね。こんなところに来るなんて、私どうかしてるのかしら」  なかなか失礼なことを、よくサリの前で呟けるな……アキまで嫌な気持ちになる。  サリは「本当、よく来てくれたわ」と笑って対応している。怒ってもいい場面だけど……多分気にしていないのだろう。 「お仕事は、午後で終わり?」 「いえ、早退したの。ちょっと気分が悪くてね」 「ここに来て大丈夫なの?」 「私もびっくりしてる。どうしてここに入ったのか、自分でもよくわからない」  話の途中で、猫神様が女性の前のテーブルにぴょんと現れる。  突然過ぎて、女性は声も出せなかった。 「そりゃあよくわからんだろ。ここは神様たちの食堂だからな」 「ひゃあ! 猫がしゃべった!」  腰を抜かして、椅子から落ちそうになる。  両手をテーブルにつけて、何とか体勢を保つ。女性はサリの方を見て「どういうこと!?」と聞いた。 「世の中、不思議な世界もあるものですね」 「他人事みたいに言わないでよ! 何が起きてるの!?」  ここまで取り乱すなんて……確かに普通じゃないことが起きている。  その反応は別に大袈裟だとは思わなかった。アキもそれくらい驚いたはずだから。  猫神様は手で耳を畳むようにして「まあまあ、そんな甲高い声を出さないで」と渋く諭している。
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