3章 人気の合わせ味噌 ~焼きネギと舞茸入り贅沢豚汁~

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 テーブルに肘をついて、頭を抱えるミサ。大切な人に、好きと言えなかったこと。大切な人の母を、もっと気にかけてあげていたら。  ちゃんと大切だと伝えていたら、こんなに心が沈むことがなかったかもしれない。  ミサが死を考えるようになったのは、ミサの中にある後悔の塊が存在感を増しているからなのだろう。  事情を聞き終えたサリが、ゆっくりと口を開く。 「その想いは、二人に届いているはずよ……」  ぐすんと鼻が鳴るミサ。涙の粒がテーブルに落ちた。  サリは励ますように「辛かったわね」と声をかける。  アキはその涙を見て、どうにも居た堪れなくなった。アキがミサにかける言葉は、何も思い浮かばない。  話を聞くのに夢中になっていて食べかけだった豚汁に目を向ける。気を紛らわすように、アキは豚汁の中の焼きネギを口に入れた。  シャキシャキという食感とネギの甘みがぼーっとした頭の中を活性化させてくれる。  アキが食しているところを横目で見たミサも、合わせるように豚汁を食べ始めた。 「美味しい……美味しい……」  長ネギ、舞茸、豚肉、根菜……ミサの口の中を支える食材たち。  涙を流しながら、その味を噛みしめる。  ミサはきっと、順也とお母さんとの思い出を振り返りながら食べている。アキはミサの様子を見て、そう予想ができた。 「甘みも、辛みも、そのみそ汁には詰まっている。あなたの人生と一緒ね」 「……確かに」  サリの言葉でミサは前を向いた。ハッと気がついたみたいに目を丸くさせる。 「甘い白味噌、辛めの赤味噌、それが合わさった合わせ味噌。その幼馴染の彼との思い出は、辛いことだけではなかったはずよ」 「……順也」  今は辛い記憶しか思い出せないかもしれない。でも、生きていた時の甘い記憶もある。  その感情を呼び起こそうと、サリは寄り添うように告げた。  ミサの目からより一層の涙が流れてきた。 「あなた……死のうとして、自暴自棄になって、そしてこの店に行き着いたんでしょ?」 「……夢の中で……声がしたんです」 「声?」 「ええ。人形町の中にある横道に、私を救ってくれるお店があるって」
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