3章 人気の合わせ味噌 ~焼きネギと舞茸入り贅沢豚汁~

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 夢で声がした。それは誰の声なのだろう。  アキの疑問は、すぐにサリが質問してくれた。 「どんな声がしたの?」 「……わかんないです。気落ちしていたし、ぼんやりとした中での声だったので」 「そっか。まあそうよね。夢の中の記憶なんて、すぐ忘れるもんね」 「はい。でも……気がついたら、人形町に向かって足が動いていました。夢の中で声と共に、このお店の外観の映像も流れたので」  サリはそれを聞いて「神からのお告げみたいなものね」と言って笑った。  ミサにも、選択の機会が回ってきたのだ。アキにも届いたように、生きるか死ぬかを選ぶ機会というものが。  夢でのお告げなんて……そういう手法もあるんだと、アキは心の中で感心した。 「それで……ここに来た時と比べて、どう?」 「どうって?」 「……死にたい気持ちは、消えない?」  いよいよ本題か。アキも倉持も選んだ、運命の瞬間。  アキまで緊張感が届く瞬間だ。アキ自身も、足が震えている。  ミサは箸を置いて、サリの方をじっと見た。一度唾を飲み込んで、今の気持ちを吐露する。 「私は……大切な人がいない世界に、興味なんてないです」  倉持と一緒だ。やっぱり、サリの定食を食べても死を捨てきれないでいる。  アキは倉持が消えていくシーンを思い出した。  生きて自分の人生を続けるという可能性を考えないのは、もったいないと思えた。アキは勢いよく立ち上がる。 「待ってください! それじゃあ、死を選ぶってことですか?」 「……死んでもかまわない」  力ないミサの声。アキは力が抜けるように、椅子に体重を預けた。  アキも虫のような声で「それは悲しいよ」と呟いた。  場を整理するように、サリが説明してくれる。 「ここは神様たちが、あなたのような瀬戸際の人間を迎え入れるお店よ」 「さっき白猫も言っていたけど、瀬戸際って……何なのよ?」  窓際でぐっすり眠っている猫神様を一瞥して、サリに聞く。  この店のコンセプトはまだ、はっきりとミサには伝わっていなかった。 「生きるか死ぬか、迷っている人間に、選択を与えるってこと」 「……生きるか死ぬか、瀬戸際の人ってことね」
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