0人が本棚に入れています
本棚に追加
二列になって並んで電車を待っていたからか、いざ電車の中に乗り込もうとしたとき、サギと私とのあいだに思った以上に人が入って、それ以上近づけなかった。結局、私はその日はあきらめ、翌日いちからやり直すことにした。
今度は、サギとともに電車の中に乗り込むのではなくーーあらかじめその電車に乗っておいて、記憶に叩き込んだ、サギの先日乗り込んでいった車内の位置あたりで、待ち受けることにした。
サギの乗ってくるその駅に到着するまで、私は落ちつかなかった。車窓の外の景色を見ながら、さまざまなことを考える。
サギをこの世界から排除してやれば、きっと鉄くんは、この私に戻ってきてくれる。
そしてもう一度ーーこの私を痴漢してくれることだろう。
鉄くんのその指の動きは、いつもいつも大胆だった。躊躇なく私の下着の中の、一番デリケートな部分にまで入り込んでくる。
まるでプレゼントを抱えたサンタクロース姿の彼が、部屋の窓から突然入ってくるようなものだ。
私のその大事な部分は、その時点でもうひどくうるおってしまっている。とても恥ずかしいが、致しかたないことだ。
あとは勝手に、私の中の大海を、彼はそのつど思い思いの泳法で自由に泳ぐだけなのだ。そしてそのつどーー私の全身を、凄まじいほどの快感が、その喜びとともに貫いてゆく。
ただ、これまでと違うのは、そうやって楽しんでいる私と鉄くんの足元には、あの少女、サギがーー制服姿で、頸動脈から血を大量に流しながら横たわっていることだ。
彼女の目は虚ろで、その顔はすっかり青ざめ、さっきからあらぬ方向を向いている。微動だにしないが、その肌に触れれば、きっとまだ、息があったころのぬくもりがそなわっていることだろう。
でもそれも、いずれ冷たい土のようなものに変わる。彼女は埋葬される。
私と鉄くんの周囲の人々はスマホを見たりしているが、その全員がサギの頸動脈からほとばしり出た鮮血を浴びている。
でも平然としてーーまるで人形のようにただスマホを見続け、各々の目的地に向かうことだけを考えているのだ。
鉄くんは、それらの人々を静かに眺め渡した後で、私の唇を強引に奪い、その中に舌を差し入れてきた。
このイメージが頭に浮かんだ瞬間、私はそのままいってしまいそうになった。
ハッとして車内の表示を見ると、そろそろサギの乗り込んでくる駅に近づきつつあった。
私は息を飲んで、電車が動きを止め、目の前の扉が開くのを待った。
私の計画は、ものの見事に成功したようだ。私とのあいだに人を一人おいたくらいの距離まで、サギは車内に乗り込んでくると接近してきたのだ。
あらためて、間近で彼女を見ることになった。
なんて、言ったらいいのだろう。どう、表現すればいいというのだろう。
そう、よく、「玉のような赤ちゃん」などというが、あの玉、玉、という言葉以外に、ボキャブラリーのない私にはちょっと思いつかない。
とにかく一点のくもりなく、その顔かたちは整っている。
顔かたちだけではない。私は女としてはわりに背丈のある方だが、彼女もほぼ同じくらいあって、そのスタイルもブレザーの制服の上からでも、はっきりと、その良さがわかる。
最初のコメントを投稿しよう!