You will be quiet #6

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 ……果たして鉄くんはーーこの事実を知っているのだろうか?  もし、知らないでいるのだったらーー。  あのふざけきった少女に対して、猛烈な怒りと憎しみが、私の中に蘇ってきた。  やはり最終的には、私の手できっちりと始末してやるべきだ。でも、。そんな気がする。  それよりもまず、あの少女のことを、もっと知る必要がある。  でも、そのためにはいったいどうすればいいというのだろう。  まさか、鉄くんに直接聞いてみるわけにもいかない。  このことに里美が気づくよりも前に、ことを進めなければならない。時間は、ない。      2  気がつけば、私はあの少女のことを考えてしまっている。そんな状態になってしまっていた。  それぐらいあのときの衝撃が、棘のように刺さって取れないのだ。  どこか彼女には、自分の理解を超えているような、そんなところがある。  世代間の差、なんていう薄っぺらなものでは、たぶんないと思う。そういうものが厳然と存在している、ということは知っているけど。  同性同士の趣味嗜好の差、なんてものでももちろんないだろう。趣味嗜好、などという言葉だけで説明されても困ってしまう。  この感覚を、どう説明したらいいかもわからない。  いずれにせよ、私はもっと、あの少女を知る必要があった。そのためには、彼女の観察を続けるしか、他に方法がないように思った。  前回の成功例を、私はもう一度踏襲することにした。うまくいくときのほうが比較的多かったが、何回かは姿の見えないときがあって、その理由はわからないが、それでもあきらめずに、私は観察を続けた。  するうちにどうやら、サギは男性への痴漢行為を常にしているわけではなくーーただつり革を握って、じっと窓の外を眺めているときもある、ということもわかってきた。  そのときの、その横顔の清冽なことといったらない。つい、見とれてしまうほどだ。  おかげで余計にーーその痴漢行為とのギャップを強く感じざるを得ないのだ。  しかし今日は、その何回か、の方の日に、どうやら当たっていたようだった。さっきから、サギの姿が見えない。  ひととおり周囲を見回してみたが、混んでいることもあって、完全に確認することもできずにいる。  といって私はスマホを取り出して眺める気にも、持参している詩集を読む気にも全然なれずに、ただ黙って虚ろな気持ちで電車に揺られていた。  そのときだった。私はハッとして、体の動きを止めた。  より正確にいえば、自分のカラダに、その変化はさっきからおそらく起きていたのだがーー私はそのことに気づかずにいたのだ。  今日はいつにも増して、電車の中は混んでいる。それも理由の一つかもしれない。  ……誰かが、私のカラダを触っている。  
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