7 エピローグ

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「……嫌だったら、拒んでください」  ポケットからハンカチに包まれていたリングを取り出し、左の薬指にはめようとする。  拒めるはずがなかった。  胸がキュウっと切なくて、苦しくて。  私はこんなにも桐人さんに惹かれていたのだと、ようやくわかった。  いつから用意していたのだろう、そのプラチナのリングは、ほんの少しだけ、サイズが大きくて。  私は、目に涙を溜めながら、クスッと笑った。 「……やっと、笑ってくれましたね」 「あ……」  自分は、そんなに長く笑っていなかったのか、と思った瞬間、  私は、ふわりと桐人さんの両腕に包まれた。 「今度、一緒にサイズ直しに行きましょう」 「……はい」  耳元で優しく言われて、私は素直に返事をする。    あの時、桐人さんが話を聞いてくれていなかったら、私は今ここにいないだろう。  いや、そもそも裕貴の秘書にならなければ、桐人さんと出会うこともなかった。  人の縁とは不思議なものだ。  私たちの人生は、思いがけない出会いや出来事で繋がっていく。  だからこそ、その縁を大切にしたい。  桐人さんの顔が近づいてくる。  目を閉じると、唇が触れ合った。  その一瞬、世界が静止し、私たちの心がひとつになったように感じた。 ー 完 ー
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