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「もちろん、嫌なら断ってくれてもいいんだけど」
安浦先生に会えるとか、そんな下心で引き受けるべきじゃない仕事なのはわかっている。
でも、このまま就職活動をしてもどこにも雇ってもらえない気がする。
私は、裕貴の提案を引き受けることにした。
「わかった。私、秘書やるよ!」
「本当に? やった、ありがとう!」
よほど嬉しかったのか、裕貴は抱きついてきた。
「ちょっと、オオゲサ! 私の方こそありがとう。私が全然就職できないから、同情してくれたんだよね?」
「同情じゃねーよ。俺はおまえと一緒に仕事できるの、すげー嬉しくてっ……」
ん? どういう意味だろう……?
小首を傾げていると、裕貴は頭を掻きながら、
「あーもう。まどろっこしいのはやめだ」
そう言って、ジャケットの内ポケットから何かを取り出す。
それは、リングケースだった。
裕貴がケースを開けると、小さなダイヤモンドが煌めく指輪が入っていた。
いくら鈍い私だって、その意味くらいはわかる。
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