護衛の女性

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護衛の女性

 色気のあるなめらかなテノールの声がイヤホンから流れる。 「03番? 異変はないか?」 「大丈夫です」  本郷律子(ほんごう・りつこ)は中央ぶち抜きフロアの二階から身を乗り出して一階を見た。 「03番より02番へ。大丈夫?」  後輩の葛西(かさい)に返事をうながした。 「大丈夫でーす。眠ってても大丈夫なくらい問題なし」  律子はむかついた。眠ってても大丈夫なくらいとは何なのだ。 「ふざけてんじゃないわよ。そんな調子で一柳の護衛を名乗ってほしくないんだけど」  遠くに葛西を見出し、睨みつければ、軽い調子で声が返ってくる。 「俺はいつでも本気ですよー?」 「だからあんた……」 「私語は慎め」  とたんにぴたりと二人は言い争いをやめた。  威厳のあるさきほどの色気のあるテノールの声はボスの鈴城(すずしろ)だ。 「碧斗(へきと)さんのスピーチが始まる」
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