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律子は群がる女子どもに、慇懃無礼なしぐさで礼をした。
「お嬢様方、十八、十九ではまだ飲酒はできません。そんなことも知らない方々が、碧斗さんを誘う資格はありません」
女子大生たちは気色ばんだ。
「な、なによー」
「ブス」
「乳牛」
すうっと律子が目を細めて、殺気を放った。
「……っ」
「なによこいつ」
女子大生たちは怯えだしたが、虚勢を張っている。律子は続けた。
「しかもです。碧斗さんは婚約者持ちです」
「でもまだ結婚してないじゃん」
律子はスマホを取り出し、紗絵の写真をアップさせると、たかだかと黄門様の印籠のように見せつけた。
「このお方こそ、碧斗さんの婚約者、本郷紗絵嬢十七歳になりたて高校二年生! あなたたちには、ルックスでも家柄でも若さでも勝っているのです」
「くっ」
「確かに可愛い……!」
「お嬢様方」
にいっこりっと律子は微笑んだ。
「去っていただけますね?」
「い、いこっ」
「そうよ、ほっといていこう」
女子大生たちは去った。
「碧斗さん」
「うん、助かったよりっちゃん」
碧斗の腕には鳥肌がたっていた。よほど、さっきの女子大生軍団が怖かったらしい。
「すご……」
千尋はくすっと笑って言った。
「千尋さん?」
「……」
碧斗の声に、千尋は目を細めた。
「じゃあ、碧斗くん。君の将来の結婚相手の兄として、今の本郷さんの女子たちへの牽制は完璧だったと褒めたいんで、少し彼女を借りてもいいかな?」
「いいんじゃない?」
碧斗の声は、少しとげとげしく聞こえた。
碧斗の突き刺さるような視線をぶっちぎって、千尋は律子の腕をひっぱって講堂の外へ出た。
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