シスコン兄

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「あ、千尋」  普段の習慣で、護衛の対象として千尋を見てしまった。  本がばあっと雪崩のように落ちてくる。 「千尋」  そう言って、突き飛ばしたはいいのだが。 「律子」  千尋は律子に手を伸ばした。そして、その手をつかんで引っ張った。 ――ばさばさばさっ。 気づいたら、本にまみれてふたりで折り重なって倒れていた。 (あたし、助けた意味ない。どうしよう、こんなことで碧斗さんの護衛続けられるのかな)  千尋を下に敷いているのは律子のほうだ。  その胸に当たっている胸板は、意外にも引き締まっていて。 (何を考えているのよ! 相手は千尋よ? 紗絵の兄貴よ?)  そうぐるぐる考えながら、上半身を起こしてこう言った。 「大丈夫? 千尋」 「……」  千尋は、顔に落ちてきた本を片手で取り去ると、熱を帯びた目で律子を見た。 「はっ、はあっ」  律子も気づいた。  律子は、千尋の腰あたりをまたいで、おへそのあたりに座り込んでいた。 (どんなエロ体勢よ)  千尋は顔に乗っていた本をとりさると。 「いい眺めだなあ。でか乳を下から見上げるとこんな感じなんだ」  そんなことを言いながら、指ですすす……と胸の谷間を上から下へとさすった。 「あっやっ、」  あられもない声をあげてしまい、舌を噛みそうになった。千尋がゆっくり半身をおこすと。 「死ねええ!」  罵倒の語とともに、律子は千尋の頬に平手をくらわした。  この体勢は事故だ、事故。だが、今、谷間触る意味あった?  本屋の爺ちゃんが、おろおろして客と本を気遣っていたので、律子と千尋も、本を片付けるのを手伝った。  教訓・本は大事に扱いましょう。
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