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「よくやった。よく碧斗を守ってくれた」
木目の写真立て。本がぎっしりとつめられた本棚。
一柳の会長の執務室は古くて重厚なものでできている。
デスクに座る時盛(ときもり)翁は、その白い髭の顔をあげて称える言葉を発した。
「今後とも励むように」
「はいッ!」
律子は、ボスの鈴城と後輩の葛西と一緒に、頭を下げた。
「うへえ、緊張したあ」
扉を閉めるなり、とても緊張しているとは思えない口調で言ったのは、葛西。
「あんたね。そういうことは屋敷から出てから言いなさいよ」
「だってさァ。りっちゃん先輩は緊張しないんスかあ?」
「少なくとも、あんたよりは大丈夫よ」
「お前らな……」
律子と葛西がぽんぽん言い合い、鈴城が頭痛がする顔をしていたときだった。
「律子か」
仕立てのいいスーツを着た、灰色髪の男性が現れた。
「本郷(ほんごう)専務」
律子は苦手意識を持って彼の姿を見つめた。そして、彼の子息と子女のふたりも彼の後ろに見出した。
(げ、紗絵(さえ)もいるじゃないの。それに千尋(ちひろ)も)
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