13人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
「超美人で、惚れ直したっす! 俺とあとでドライブしましょう。そして、エッチなホテルにしけこみましょう」
「葛西、あんたね」
葛西のうざさをどう回避しようかと考えていると、鈴城がその首をきゅっとひねった。
葛西は白目をむいている。
「本郷、悪かったな」
「鈴城さんが謝る必要はありません」
どこまでもストイックな鈴城と話していると、気分が落ち着く。
「退院したんですね」
「医師や看護師に止められたがな。幼い頃から見守ってきた碧斗さんの晴れ姿を見れるとは感激だ」
「……十八歳のパーティーのときにも同じこと言ってませんでした?」
「そうだっけか」
「そうですよ」
鈴城はたまにずれた答えを言う。
(まあ、そういうところがいいんだけど)
律子はにこにこしてしまう。
「そのドレス、」
鈴城は明後日の方向を見て言った。
「似合ってる」
(は、はあっ)
鈴城の最上級の褒め言葉に、律子は頬が熱くなるのを感じた。
でも。
(鈴城さんは優しい。でも)
着飾っていて、他の人には褒められているのに、碧斗のパーティーなのに、楽しめない自分がいた。
(碧斗さん、あたしを見て……)
着飾った自分に見惚れるまでいかなくても、止まった視線がほしい。万感を込めて、碧斗を見た。
碧斗は律子を見ることはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!