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幕が上がり、ステージ上に、碧斗が姿を現した。
「皆様、僕の二十歳の誕生日に、お祝いに来てくださってありがとうございます」
拍手が沸き起こった。洗練されたスーツ姿の碧斗は、他の誰よりも輝いてみえた。
「今日は皆様に、お見せしたいものがございます」
そして、ヒモをひっぱり、スクリーンを下した。
プロジェクターと音響装置を設置すると、持っていたタブレットを指で弾いた。すると、背後のスクリーンに画像が映った。
その画像には、アニメ画の女の子が描かれていた。
(アニメの女の子……?)
目が顔の三分の一を占めているその五人の女の子は、緑やら赤やら青みがかった黒髪やら、変な髪の色をしていた。ピンク髪というのもあって、目がちかちかするようだ。
傍に置かれた音響装置から、それぞれキンキンとした声が漏れる。
「おっはよう、お兄ちゃん!」
「ご主人様にご奉仕するのです~」
「べ、別に感謝なんてしなくていいんだからねっ」
とても、二十歳の誕生日に大の男が発表するような品物ではない。
「これは……どういうことだ、碧斗」
「これは、僕の知人のゲーム会社『ガールズセレクト』の社長が開発したスマートフォン男性向け恋愛シミュレーションゲーム、『ハート色女子』です」
群衆の中には、「あ、これ僕持ってる」「確かSNS上でバズってめちゃくちゃ売れてるっていう」という声がちらほら。その中にはスマホを持ちだして撮影する者もいて、SNSに投稿している者もいる。
「なにを……!」
碧斗の祖父、時盛翁はもう息も絶え絶えだ。怒りのためか酒のせいか、禿げた頭まで赤くなっている。
「これは、研究室の先輩が入社したゲーム会社のスタッフと共同開発したものです。ちなみにシナリオ担当は僕です」
「なにを恥さらしな……」
時盛翁は憤怒の形相で言った。
「こんなくだらん物を作りおってからに! やめよ。いますぐやめよ」
「いいえ、やめません、お祖父様。僕はこの会社にシナリオライターとして入ります。大学もやめます」
「碧斗……!」
碧斗の父母も、息子の足にすがらんばかりに檀上に近づいた。
「今日僕はここに、一柳の継承権を破棄することを宣言します」
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