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後ろから、天然の茶色の髪の毛をふくらみのあるボブカットにした少女が現れた。
その後ろには、同じく似たような茶髪の青年が控えている。
本郷専務が言った。
「律子。碧斗さんの護衛がうまく行ったようだな」
「はい、伯父様――じゃなくて、本郷専務」
この専務は、律子の母の兄にあたる。
つまり、律子は専務の姪なわけだ。
専務の姪といったら、いいところのお嬢様扱いされてもいいはずだが、会長の孫で社長の息子の碧斗を護衛する危険な立場にいるのには理由がある。
「これからも、励め」
「はいッ」
神妙な顔をする律子だったが、いかにもバカにしたように笑うのは律子のみっつ年下の女子高生の従妹の本郷紗絵だった。
「キャハハッ。これくらいで図に乗らないでよね。あーあ、アンタみたい奴、碧斗さんの代わりに刺されればよかったのに」
愛らしいぷっくりとした唇でそんなことを言うものだから、律子は反撃したくなった。
「そういう紗絵こそ、碧斗さんの婚約者なのに、相手にすらされてないじゃないの」
「はあ?」
これは痛いところを突かれたらしい。従妹の本郷紗絵は律子と違って本当のお嬢様なのだから、周囲からちやほやされて生きてきた。
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