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お嬢様のSP
「お嬢様、一夜明けて、落ち着きましたか」
「うむ、くるしゅうない」
(くるしゅうないって何よ。ちょっとウケたわよ)
律子と葛西がボディーガードするのは、本郷紗絵だった。
そう、いなくなった碧斗のかわりに守る対象は、次の社長になる千尋の妹。
千尋は千尋で別にボディーガードがついている。鈴城と、他の新人護衛の計ふたりだ。
大学一年になった紗絵は、髪も伸び、さらに美しさを増していた。律子といえば、相変わらず脱色させた茶のポニーテールのままだ。まったく変わりなし。
紗絵たち本郷家は、千尋が正式に一柳を継ぐ者として認められてから、一柳邸の敷地内(ばかでかい)に家を建て、住んでいた。
よって律子は今まで通り一柳の使用人の寮を出て、同じ敷地内の本郷家のお嬢様を朝連れ出し、大学で警備をし、そして夕方帰るのルーチンワークだ。ちなみに、運転手が玉川なのも同じ。
その恵まれきったーーと思われがちだが危険度がかなり高いーー紗絵は面倒くさそうに教室の一部で、ため息をついた。
「律子、あんた、あたしのかわりにパソコンに内容写してえ。授業中って眠くなるのよね」
「そんなことをすれば問題になるのではないですか、お嬢様」
「たまに出る慇懃無礼っぷりがむかつくの~~!」
紗絵はぷんとむくれた。
♪~~♪~~
自分のスマホが鳴るのに、律子は気づいた。
「ちょっと失礼しますね」
そう断りを入れて教室を出て見てみると、千尋からのラインだった。
『紗絵ちゃんをえろい目に合わせたようだなあ』
『紗絵ちゃんに全力で謝れ』
『むしろ、パンツを見て耳を舐めた真似をした男を今から殺してこい』
「くっ……」
シスコンぶりも相当この二年間で磨きがかかったようだ。
『既読スルーをするな』
「くっ、クソうざいわこのシスコン」
律子はポニーテールをばさっと払い、そして千尋のラインにメッセージを送った。
『遺憾の意』
速攻で返事をされた。
『短すぎる』
『あとお見合いすることになっちゃった。紗絵ちゃんに嫌われる。君がなんとかしろよ』
『あきらめて結婚しなさい、シスコン兄』
ラインで返事をすると、携帯の電源を切ってしまった。
「誰から?」
教室に入ろうとしたら。「トイレ行きますって言って出てきちゃった」と言い興味津々で紗絵が尋ねてきた。
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