お嬢様のSP

1/4

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ

お嬢様のSP

「お嬢様、一夜明けて、落ち着きましたか」 「うむ、くるしゅうない」 (くるしゅうないって何よ。ちょっとウケたわよ)  律子と葛西がボディーガードするのは、本郷紗絵だった。  そう、いなくなった碧斗のかわりに守る対象は、次の社長になる千尋の妹。 千尋は千尋で別にボディーガードがついている。鈴城と、他の新人護衛の計ふたりだ。  大学一年になった紗絵は、髪も伸び、さらに美しさを増していた。律子といえば、相変わらず脱色させた茶のポニーテールのままだ。まったく変わりなし。  紗絵たち本郷家は、千尋が正式に一柳を継ぐ者として認められてから、一柳邸の敷地内(ばかでかい)に家を建て、住んでいた。  よって律子は今まで通り一柳の使用人の寮を出て、同じ敷地内の本郷家のお嬢様を朝連れ出し、大学で警備をし、そして夕方帰るのルーチンワークだ。ちなみに、運転手が玉川なのも同じ。  その恵まれきったーーと思われがちだが危険度がかなり高いーー紗絵は面倒くさそうに教室の一部で、ため息をついた。 「律子、あんた、あたしのかわりにパソコンに内容写してえ。授業中って眠くなるのよね」 「そんなことをすれば問題になるのではないですか、お嬢様」 「たまに出る慇懃無礼っぷりがむかつくの~~!」  紗絵はぷんとむくれた。  ♪~~♪~~  自分のスマホが鳴るのに、律子は気づいた。 「ちょっと失礼しますね」  そう断りを入れて教室を出て見てみると、千尋からのラインだった。 『紗絵ちゃんをえろい目に合わせたようだなあ』 『紗絵ちゃんに全力で謝れ』 『むしろ、パンツを見て耳を舐めた真似をした男を今から殺してこい』 「くっ……」  シスコンぶりも相当この二年間で磨きがかかったようだ。 『既読スルーをするな』 「くっ、クソうざいわこのシスコン」  律子はポニーテールをばさっと払い、そして千尋のラインにメッセージを送った。 『遺憾の意』  速攻で返事をされた。 『短すぎる』 『あとお見合いすることになっちゃった。紗絵ちゃんに嫌われる。君がなんとかしろよ』 『あきらめて結婚しなさい、シスコン兄』  ラインで返事をすると、携帯の電源を切ってしまった。 「誰から?」  教室に入ろうとしたら。「トイレ行きますって言って出てきちゃった」と言い興味津々で紗絵が尋ねてきた。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加