お嬢様のSP

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「……放せよっ」  その白皙の美貌をわずかに紅潮させえて、久酒は葛西の手を振りほどいた。さらに、律子も後ろから葛西の援護にかかる。 「困ります、経済学部生の久酒加州さん」  こちらはお前のデータ握っているんだぞと闇にほのめかしている。なにしろ、碧斗の学友だった青年だ。 「いや、なんでもないから」と言って、へこへこして去っていった。 「大丈夫でしたか? お嬢様」  葛西が頭を低くしてこう言うが、ぽろぽろ涙を目に蓄える紗絵が救いを求めるのは律子だ。 「律子おー」 「紗絵」  紗絵がえぐえぐ涙を流したので、律子はおろおろした。かまわず紗絵は律子に抱き着いた。 「お。俺。かっこよく守ったのに……」  葛西は固まった。  まあ、紗絵がこうして懐いてくれるのは嬉しい。だが、久酒のことは要注意だ。このことは本郷専務に報告しなくてはいけない。 (あと葛西)  律子は考えた。自分がなかなかなびかないせいで、葛西の性欲がとんでもない方向へいくのでは……と考えたが、このことは、本郷専務には教えないほうがいいだろうと心に決めた。
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