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本郷専務とミーティング
「本郷専務。ちょっと」
「おお、」
会議が終わったあとの伯父を捕まえて、律子は時短で概略を話した。
「うむ、久酒専務の息子さんか」
本郷専務が自分の肩を揉んで、首をくらくらさせた。
「久酒専務の息子の加州くん。一柳の新宿支店副店長に来年の春から就職が決まっている。久酒専務は難しい性格でな、直属の部下には慕われているんだが、女性はルックスで差別するし、パワハラ行為も酷いし、社長に取り入るのだけはうまい。息子もその血を濃く受け継いだようだ。私は、以前会議のあとでこう注意したらな、一時期敵対行為とみなされたようだ。今はそのぴりぴりした雰囲気もやわらげようとしているが。お互いにな」
「……」
律子は言った。
「どこからが久酒専務の思惑で、どこからが加州くんの恋心でしょうか」
久酒専務が本郷専務に注意をされて敵視したものの、仲直りがしたくて息子と娘をそれぞれくっつけようと考えたかもしれないのだ。
「加州くんが以前から紗絵のことを好いているようなのは事実だ。以前、いなくなった碧斗さんが言っていた」
――いなくなった碧斗さんが言っていた。
どうしよう。碧斗の名前を聞くだけで、今もこんなに胸がうずいてしまう。
律子はきゅ、と胸の前に手を置いて我慢した。
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