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(あいつがまだまだなのに、千尋の護衛についたのは、あいつのお姉さんと千尋を結婚させたいからなのかな)
こっそり律子は本郷専務の顔をうかがった。
そもそも、なぜ支店長の息子なのに護衛というポジションについているのかわからない。
(まあ、あいつの家庭事情とか興味ないし)
律子は流すことにした。
本郷専務は難しい顔をした。
「それで、紗絵と紗絵に接近する加州くんの話題にうつるが、どうしたものかな」
「どうします? あたしや葛西が久酒くんの邪魔をしないほうがいいのでしょうか。彼はまっとうにアピールしています」
それに、繊細そうな美形だしね、と律子は心の中でつけたした。
「それは困るぞ律子!」
がっと首をこちらに向けたので、ちょっとぎょっとしたが外へは出さない。
「紗絵があの目ばかり大きい色白もやしに、て、手でも出されたらどうする。ああ、律子が男だったら紗絵を喜んでやるのにな」
「千尋は」
「兄妹でなど、問題外だ!」
「くっ」
律子はふたたび、くっと笑いだしそうになった。いや、実際笑ってしまった。
「専務。伯父馬鹿すぎますよ。あたしが男で、紗絵と結婚しろと言われて付き合っていたら、今ごろ刺しあいのニュースになってますよ」
その笑みに腹立ちを抱いたのか、本郷専務はむう、とうなった。
「まあ、加州くんが今後紗絵に接触してくるようなら、『婚約者がいたが、死んでまだ未練がある』とでも言いくるめて排除しろ」
「碧斗さんを勝手に死なせないでください。そして久酒くんはあたしが碧斗さんの護衛をしていたときから紗絵の恋愛事情は知ってるんですけど!」
「排除しろ」
「あ、はい」
勢いに押されてうなずいた。
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