12人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
遭遇
「ねえねえ、律子。明日か明後日くらい、一緒にお出かけしない? 甘くて冷たい甘味が食べたいの」
メイドの里美に誘われたのはそんな時期だった。
「いいわね。あたしの靴、だいぶ傷んでるから買いたい」
「あー、あんた、履きつぶしすぎよ」
ふたりともシフト制だったので、休みの希望袋に自分たちの書いたメモを放り込んだら、あっさり休みの申請が許可された。
「この靴可愛くない?」
「可愛い!」
などときゃっきゃと笑って靴屋でパンプスを買った。
「待って、律子。あたし、トイレ寄りたい」
「うん、待ってるー」
外でぷらぷらしていると、道路を挟んだ反対側に見知った顔をみつけた。
「あ、……」
なぜか、この通りの色が一気に消え失せた。
時は止まり、ここにいるのは彼と律子とのふたりだけ。
見知ったどころではない。
一柳碧斗が歩道に立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!