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「アカリさん、聞こえますか? 返事をしてください!」
ツクヨミがアカリを必死で呼びかける。
だが、アカリは自我を失い、記憶と心に異常をきたしていた。
「ダメか……僕が余計なことを言ってしまったせいで、自我制御プログラムが壊れてしまった。バックアップファイルで上書きするしかない」
ツクヨミはそう呟いてしばらくすると、アカリは徐々に自我を取り戻し、記憶と心に正常さを取り戻していった。
「ひっ……!」
奇妙な声をあげながら自我を取り戻したアカリの目に映ったのは、紳士のツクヨミではなかった。
突如現れたスクリーンの向こうには、痩せ型の若い男がはっきりと映っていた。その男は、寝癖でもさもさした黒髪と青白い肌をしており、鋭い目の下には深いクマがある。
それはツクヨミとは全く異なる姿だった。
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