現世 恋人

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現世 恋人

 アカリが魂として現世に戻ってから2日後、彼女の葬儀がしめやかに執り行われた。彼女はその静かな式を両親の背後から見守った。  葬儀はあっという間に終わり、夕暮れが訪れた。  アカリの実家の和室では、彼女の両親が仏壇を背にして正座している。  その向かいには、スーツ姿の若い男性が同じく正座をしていた。彼は170センチの中肉中背で、日焼けした肌と整った短髪が彼の好青年としての印象を一層際立たせていた。 「イツキさん」  アカリの父が沈黙を破り、その男性の名を呼んだ。 「本日は娘の葬儀に足を運んでいただき、ありがとうございました。イツキさんが来てくれた事、アカリもきっと喜んでいるでしょう」  父の落ち着いた言葉が和室に響き渡ると、両親は頭を深く下げた。 「……お義父さん、お義母さん。どうか顔を上げてください」  イツキという名の男性は困惑した表情で両親にそう促した。 「アカリさんを失った悲しみは、言葉では表せないほどだと思います。私のことは気になさらずに。本来であれば、私の父と母も一緒に参列したかったのですが、家庭の事情で私一人での参列となってしまいました。こちらこそ深くお詫び申し上げます」  アカリの両親が顔を上げると、今度はイツキが頭を下げた。  母の隣に座っていたアカリは、そんな3人のやり取りを黙って眺めていた。 《アカリさん。せっかく恋人の『持田(もちだ)イツキ』くんがアカリさんの葬儀に来てくれたというのに……どうして彼に苦い顔を向けているのですか?》  アカリは黙り込んだが、ツクヨミは続ける。 《どうやら、アカリさんの未練は両親の事だけではないようですね》  アカリの心の奥底を見つめるかのように、ツクヨミはそう呟いた。
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