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ツクヨミは困った様子を醸し出しつつも、ニコッと笑う。まるで何かが吹っ切れたようだ。
「はは、まさかアカリさんが僕の話を聞きたいだなんて……予想していませんでした。僕は女の人とあまり話してこなかったので、詰めの甘さが出てしまいました」
「何を言って……」
「いつまでも、アカリさんに嘘をつけませんね」
ツクヨミの話を聞いたアカリは、一瞬言葉を失う。彼女はどう反応していいのか分からないまま、混乱の渦に巻き込まれた。
「アカリさん、騙してしまって申し訳ありません。僕は『月の神ツクヨミ』ではありません。現世に生きる人間です」
「え?」
アカリはツクヨミの言葉に心の中で激しく波が打ち寄せるのを感じた。彼女の目は疑念で曇り、頬は不安で引きつった。
「この世界の全ては作り物です。そう、僕が築いた『プログラム』の世界なのです」
ツクヨミから突き付けられた衝撃の事実は、アカリの思考を狂わせ、心を冷やしていく。
「え? え? え? ……ここ、ぷ、ろぐらむ、の、せかい?」
彼女の声は震え、言葉は断片的にしか出てこない。彼女の手は空中で震え、自分の存在を確かめるように自分の腕を触った。
感触がない。
それは自分が魂だから。
そう信じたかった。
でも、ひょっとしたら、違うのかもしれない。
自分がさっきまでいた現世も、この悪霊相談所も、自分とツクヨミが座っている机も、机の上で静かに燃えているロウソクも。
自分自身もプログラムで生まれた存在?
「わた……し……は、だ、れ?」
わ、た、し、は、だ、れ?
アカリは壊れたおもちゃのような声で、均等な間隔を置いてその言葉を繰り返す。
「電子化された人間の魂ーー『D-So』。ここまで厄介なものだったとは……」
ツクヨミは震えた声でそう呟いた。
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